【新刊】『佐藤洋太論考集Ⅱ 伊勢神道の三面神鏡と大元神奉斎』を出版しました


本日、新刊『佐藤洋太論考集Ⅱ 伊勢神道の三面神鏡と大元神奉斎』をKindleで出版しました。前著『佐藤洋太論考集Ⅰ 初期伊勢神宮祭祀と荒祭宮の瀬織津姫神』に続く、論考集の第二巻となります。
今回収録したのは、伊勢神宮の成立以前に存在した祭祀と、その祭祀が後の伊勢神宮へどのように受け継がれていったのかを考察した二つの論考です。

三面の神鏡は、何を結んだのか

第一論考は、「伊勢神道の三面神鏡と大元神奉斎――国常立尊・天御中主神と内宮鎮座以前の祭祀」です。

神道五部書には、国常立尊の所化神である天鏡尊が、三面の白銅宝鏡を鋳造したという伝承が残されています。
そのうち二面は、日神・月神から化成した眞経津鏡とされ、伊弉諾尊・伊弉冉尊へと伝え持たれ、荒祭宮・多賀宮の御霊として祀られたとされます。
日神と月神、男女、水火という陰陽二神によって生成の原理が示されるのであれば、二面の神鏡だけでも、その道理は完結しているように見えます。

では、なぜそこへ第三の一面が加えられたのでしょうか。

神道五部書では、国常立尊、その亦名として天御中主神、そして止由氣皇大神、すなわち豊受大神が、大元神をめぐる同体の神として語られています。しかし、それぞれの伝承をたどっていくと、国常立尊を根源とする神統と、天御中主神から止由氣皇大神へと続く神統とは、本来、異なる系統の伝承であったと考えられます。

そこで本書では、この二つの神統を接続するために加えられたのが、止由氣宮に関わる第三の神鏡だったのではないかと考察しました。
第三の神鏡は、これらの神々を単純に同一神とするためのものではなく、それぞれ異なる神統と祭祀の伝承を、一つの神宝の由来の中で結びつける役割を担っていたのではないでしょうか。
さらに、高皇産霊尊を介して天御中主神へと遡るもう一つの祖系と皇統との関係、国譲り以前の祭祀、そして天照大神が五十鈴川上に鎮座する以前の伊勢へと考察を進めています。

朝熊神社の櫻大刀自神と内宮の「桜宮」

第二論考は、「朝熊神社の櫻大刀自神と伊勢神宮内宮の『桜宮』――瀬織津姫命秘抄四」です。

かつて伊勢神宮内宮の神域には、「桜宮」と呼ばれる場所がありました。そこには社殿がなく、一本の桜を通して朝熊神社を遥拝したと伝えられています。

なぜ内宮から朝熊神社を拝したのでしょうか。そして、なぜそこには社殿ではなく、一本の桜が立っていたのでしょうか。『皇太神宮儀式帳』には、朝熊神社の祭神として櫻大刀自神の名が記されています。

この櫻大刀自神をたどると、大年神、伊勢都彦命、大己貴神へと続く神統が見えてきます。さらに、朝熊神社には日月二面の白銅鏡が伝えられています。

桜木と神鏡。櫻大刀自神と大己貴神。そして天照大神の荒御魂である瀬織津姫神。これらの伝承を重ねながら、内宮に存在した「桜宮」が、天照大神鎮座以前の祭祀の記憶を伝えていたのではないかという問題を考察しました。

伊勢神宮成立以前の祭祀をたどる

今回収録した二つの論考は、一見すると異なるテーマを扱っています。一つは「三面の神鏡」、もう一つは朝熊神社と「桜宮」です。しかし、私の中では、どちらも同じ問いから生まれた論考です。

現在の伊勢神宮が成立する以前、この地では誰が神を祀っていたのか。そして、その祭祀を担った人々、神々、神宝は、どのように後の伊勢神宮祭祀へと受け継がれていったのか。

伊勢都彦神、大年神、大山祇神、朝熊水神、猿田彦大神。

伊勢に残されたさまざまな伝承をたどると、現在の皇大神宮祭祀よりも前に、この地で神々を祀った人々の姿が浮かび上がってきます。
三面の神鏡もまた、単なる祭祀具ではなく、異なる神統を結び、さらに先行する祭祀と、それを受け継いだ後継者とを結ぶ神宝だったのかもしれません。

今回も、多くの史料を一つずつ確認しながら、かなり長い時間をかけてまとめた一冊となりました。
ようやく、また一つ研究を形にすることができました。

興味を持っていただけましたら、お読みいただけると嬉しく思います。

なお、本書はKindle Unlimitedでもお読みいただけます。

Amazon Kindle

https://www.amazon.co.jp/dp/B0HM44KNFP


『佐藤洋太論考集Ⅱ 伊勢神道の三面神鏡と大元神奉斎』
――国常立尊・天御中主神と内宮鎮座以前の祭祀/朝熊神社の櫻大刀自神 瀬織津姫命秘抄四

目録

伊勢神道の三面神鏡と大元神奉斎

――国常立尊・天御中主神と内宮鎮座以前の祭祀

序論
第一節 伊弉諾・伊弉冉尊の崇めたまふ神
第二節 天鏡尊が鋳造した三面の宝鏡
第三節 国常立尊の化現と太極思想
第四節 二面の眞経津鏡と陰陽生成の道理
第五節 天御中主神の白銅鏡と止由氣宮
第六節 『古事記』の編者による根源神の再編
第七節 天御中主神と国常立尊をつなぐ第三の神鏡
第八節 第三の神鏡と皇統のもう一つの祖系
第九節 三面の神鏡と国譲り以前の祭祀
第十節 五十鈴川上の先行祭祀と孝昭天皇
第十一節 伊勢都彦神・猿田彦大神と内宮鎮座地の献上
第十二節 朝熊神社の白銅鏡二面と先行祭祀の再編

朝熊神社の櫻大刀自神と伊勢神宮内宮の「桜宮」

――瀬織津姫命秘抄四

序論
第一節 大年神と櫻大刀自神
第二節 櫻大刀自神は大己貴神の荒御魂
第三節 朝熊神社の宝鏡と日月所化の神鏡
第四節 朝熊神社の神鏡と奉斎者の交替
第五節 桜木に宿る神鏡と天照大神の荒御魂
第六節 櫻大刀自神を継承した人々
第七節 櫻大刀自神と木花之開耶姫命
第八節 大山祇神と朝熊水神


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